社員と一緒の激動期 14

社員の成長

スポーツメーカーのマーケティング…。
もちろん素晴らしい仕事だけど、いつからの夢だったのか？？？
と思いつつも、一応、話しを聞くことにした。

「子供の頃からサッカーをやっていて、
ミズノとかナイキとかに慣れ親しんでたので、
そういう会社に貢献したいんです。」

とってつけたような志望動機で、ツッコミどころ満載だった。
「それはわかったけど、なんでマーケティングをやりたいの？」と聞くと、
まあ、しどろもどろだ。

大手メーカーのマーケティング職に、
半年も仕事をしてない社会人1年目が採用されるわけない。
しかも、当時は超氷河期時代。

うちで仕事を続けさせるほうが良いとも思ったのだけど、
やる気のなくなっている社員を引き止めておくほど、余裕があるわけでもない。
Sにも申し訳ない。

ただ、縁あってうちに来てくれたんだし、
このまま放り出すのは忍びないと思った。

そこで、またまたA姐さんに相談した。

「あらら、あのおぼっちゃん、そんなこと言ってるの？甘いわね〜。
ほっとけばいいと思うけど、最初の社員だもんね。わかったわ。」
と言って、A姐さんの会社でマーケティングの講師をやっているFさん
（マーケティングのプロ）を紹介してくれた。

まずは私がお会いして、
「Nという社員がうちを辞めてスポーツメーカーで
マーケティングの仕事をしたいと言っているのですが、
何かアドバイスをしていただけませんか？」とお願いしてみた。

その方は「まず新卒でマーケティングやりたいなんて
言ってる時点でダメだけど、A姐さんの顔をたてて
とにかく話しをしてみましょう。でも厳しい話ししますよ」となった。

Nにも「マーケティングのプロの方がお会いしてくれるっていうけど、
どうする？」と聞いたら、「会ってみたいです！」ということだったので、
再度、Nを連れてお伺いした。

会議室に通されるとFさんが待っていた。

「お話ししていたNです。よろしくお願いします。
私はご挨拶だけで席をはずしますので、よろしくお願いします」と言うと、

Fさんが、「早速だけどスポーツメーカーのマーケティングの仕事が
したいということだけど、売上高が一番高いメーカーどこだか知ってる？」
とNに聞いてきた。

マーケティングのプロの優しい人が
色々と教えてくれると思いこみ、完璧に受け身できていたNは、
ポカンとしていた。

「スポーツメーカーのマーケティングやりたいのに、
売上高も知らないの？四季報みれば書いてるよ。
会社のことも知らずにマーケティングやるの？
そもそもマーケティングって何かわかってる？」と言われ、
Nは、何も言えずに真っ青な顔して黙ってしまった。

Fさんは「はっきり言って、夢だって言いながら
やりたい仕事を調べもしないで、人の話しを聞こうなんて甘すぎだよ。
僕は普通ならこの時点で君とは話しをしないよ。
でも、麦とオレンジさんのために、君に時間を割いてるんだよ。

Nくん、辞めていく社員にこんなことしてくれる社長はいないよ。
それだけは、ちゃんと覚えておきなさい。」と言ってくれた。

そのあと、私は席をはずし先に会社に戻った。

会社にはSが待っていて「どうでした？」と聞かれたので、
Fさんから言われたことを話すと、

「そうですよね。Nは表面的なことしか見てなくて、
今の仕事が行き詰まったからスポーツメーカーのマーケティングが
夢とか言ってるだけですよ。

私は今の仕事に誇りを持ってるし、私、本当に頑張ります。
すっごくいい仕事して、Nに会社辞めたことを後悔させてやります！」
と言ってくれた。本当に嬉しかったし、すごく頼もしかった。

Fさんにたっぷり絞られて、少し現実の見えたN。

「すぐにマーケティングの仕事はできそうにないので、
まずはスポーツメーカーで販売員として働いて商品を知ろうと思います！」
と言ってきた。

退職までの1ヶ月間、給料付きで転職活動を許可していたので、
色々とスポーツメーカーに応募したようだがことごとく惨敗。

就職先が決まらないまま、退職することになった。

退職後、しばらくして私物を取りに会社に来たので、
どうなったのか聞いてみると、「仕事が決まりました！」とのこと。

フロムエーで募集していた
スポーツメーカーでアルバイトすることになったので、
1から頑張りますってことだった。

夢に向かって頑張ってね！と言って送り出し
それから後は、連絡もなくなったので、
今はどうなってるのかはわからないけど…。

40歳になってるであろうN。
どこかのスポーツメーカーでマーケティングをやってたらいいな〜。

【今日のわんこ】