運と感性とひらめきでやってきた。

なんとなく20年、女社長の振返り日記。1999年に会社設立して、いま思うこと。

7年間の共同経営 16(さようなら、カビの生えた魔法の塗料)

 

*前回からのつづき

もちろん仕入れ元の会社も
専門の分析センターで成分分析をしていたし、
その結果に問題がなかったから、
大手メーカーへ売り込みに行ったのだけど…。

早速、仕入れ元の会社の技術部長へ連絡し、事の経緯を話す。
「砒素は自然界の色んなものに存在していて、
例えばヒジキ等の海藻にも入っているもの。
コーキング剤には海藻等も配合しているから、
その成分が強くでてしまったのかもしれない。」とのことだった。

とにかく、詳しい状況をお聞きするために、
成分分析を行ってくれたメーカーの責任者のもとへ、
仕入れ元の技術部長とともに会いに行った。

責任者の方は、
「本当に天然成分で抗菌できるコーキング剤があれば
こちらとしてもぜひ、使いたい。
ただ、砒素の数値が社内基準を大幅に上回ってしまったので、
弊社での取り扱いは難しい。」というお話しだった。

技術部長は
「天然成分の配合なので、たまたま検査いただいたものに、
砒素の成分が多く入ってしまったのかもしれない。
他のもので検査してみていただけませんか?」と伝えたが、

「もちろん、砒素が自然界に存在することもわかっています。
でも、1000本に1本でも社内基準を上回る砒素が
検出される可能性があるものを、
弊社が使うわけにはいかないんですよ」と。

おっしゃる通りである。
そんなリスクの高い商品を、日本を代表するメーカーが使えるはずもない…。

責任者の方は、
「余計なお世話かもしれませんが、
うちの研究所の分析は世界でもトップレベルです。
砒素については、“自然界以外のもの”が入っている可能性が
かなり高いと思います。
仕入先に、砒素のことはしっかり確かめたほうがいいですよ。
うちの分析表を使ってもらってかまいませんから。」
と、心配して言ってくださった。

帰り際、技術部長に
「どれくらいのロットで仕入れてるんですか?」と聞いてみた。

「最低1万本単位でないと、仕入れできないと言われて、
社長も強気だったので3万本仕入れてしまってます。
とにかく会社に戻って社長へ報告し、仕入れ元に話をしてみます。」
とのこと。

しかし、仕入れ先は海外の会社。
すぐに人を信じてしまう人のいい社長が、
細かい契約書を交わしているとは思えなかった。

きっと「自然界の成分で作ってるから問題ない」
で、押し切られて終わるんだろな~と想像できた。

私たちも、決断をしなければいけない時がきた。

カビの生えない塗料にカビが発生し、
天然成分のコーキング剤が砒素入り。。。

もはや、これを営業していく自信もないというか、
営業してはいけないと思った。

そうなると「赤錆防止装置」を売ることになるのだけど、
この装置、まずはトライアル設置からスタートするため、
正式に受注するまで半年以上かかってしまうことも多い。

もう既に資本金を食いつぶしているから、半年は待っていられない。

そこで、前職の広告の仕事を始めることにした。

退職する時、前職の社長が
「何かの時のために、広告の代理店契約だけしておきなさい。
小遣い稼ぎにはなるから」と言ってくれて、代理店契約をしていた。

当初は、“広告なんてやらないんだけど…”と思ってたのに、
今となっては、前職の社長に感謝だ。

というわけで、「赤錆防止装置」と「広告」の2本柱で
営業を始めることになった。


つづく


【今日のわんこ】

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